
フォトグラメトリには、得手不得手がある
フォトグラメトリを用いた3DCG生成は、写実的な表現を行えることから近年特に注目されている手法です。しかしフォトグラメトリには苦手分野もあり、不得意な対象を無理に生成しようとすると、そもそもうまくいかなかったり、かえって手間がかかってしまうことがあります。
- 関連サービス
- フォトグラメトリサービス
フォトグラメトリが苦手な分野
別のコラムでも触れていますが、フォトグラメトリは下記のようなものを苦手としています。
- 写真測量に誤認識を起こすもの
例:光沢物、透明物 - 非常に微細なため、個体としての識別に限界があるもの
例:非常に細いもの、非常に細かいもの - 質感が全面的に同一であり、特徴を捉えにくいもの
例:白一色の玉、単色で凹凸のないもの全般 - 被写体内に死角があり捉えにくいもの
例:複雑な形状のツボ、入り組んだ形状のオブジェなど
以下より、各項目を詳しく説明していきます。
ケース1:写真測量に誤認識を起こすもの
フォトグラメトリは写真から物体の形状を測量する技術ですので、きちんと形状が分かる形で撮影が行われていることが重要となります。
しかし金属製のものや、表面が滑らかな陶器といった光沢の強いもの、ガラスビンやペットボトルなどの透明なものは、光を通常以上に反射あるいは透過するため、形状通りの情報が取得できません。
そうなると当然測量結果も本来の形状とは違うものとなってしまい、結果的にフォトグラメトリで生成された3DCGがいびつな形状となります。
こういったものをフォトグラメトリしたい場合は、2つの方法で対策が可能です。
1:PLフィルター(偏光板)を使う ※光沢物のみ有効
レンズ用のPLフィルターを使用し、被写体の反射光をカットすることによりフォトグラメトリのクオリティも大きく改善することが可能です。
室内で撮影を行うのであれば、被写体への照明とカメラレンズのPLフィルターをそれぞれ用意し、フィルターの向きを90度違う角度とすれば、反射光を完全にカットすることが可能です。
このように撮影を行えば、光沢物のフォトグラメトリは格段にクオリティが向上します。
2:3Dスキャン用の昇華スプレーを使用する
3Dスキャニング機器で透明なものや光沢の強いものをオブジェクト化する際に使われる、昇華スプレーというものがあります。
3Dスキャンにおいても光沢物や透明物はスキャンが行えないのですが、これらのスプレーを使用することで物体表面に反射のない粒子を付着させることができ、形状をきれいにスキャンすることが可能となるのです。
この昇華スプレーはフォトグラメトリにも利用することが可能で、昇華スプレーを吹きかけることで透明な物の形状をきれいに生成できるようになります。
さらにこの昇華スプレーの優れた点は、名称の「昇華」という名の通り、吹き付けた粒子が時間経過で昇華することで、粒子を拭き取ったり洗ったりといった後処理が不要な点にあります。
なお、3Dスキャンには通常ですと白い粒子を付着させるスプレーが使用されるのですが、フォトグラメトリにこれを使用してしまうと、もともとの色が損なわれてしまう可能性がありますので、より粒子が細かく噴射前の被写体の色もそのまま取り込める特別なスプレーをお選びいただくのがおすすめです。
ケース2:非常に微細なため、個体としての識別に限界があるもの
単純な話ですが、砂粒や1本の毛など、高性能なカメラを用いても撮影しづらいような微細なものをフォトグラメトリするのは非常に困難です。
それらをフォトグラメトリしようとする場合、超高倍率まで寄れる顕微鏡のような撮影手段が必要となります。
ただ、おそらく砂粒や毛を1つの単位でフォトグラメトリしようという方も少ないでしょう。それよりも、こういった微細なものは集合体の状態で扱われることがほとんどです。
しかし集合体の場合でも技術的には難しいと言わざるをえません。
ここでもやはり微細なものを写真で捉えることの難しさが影響してきます。
例えば皆さんが砂漠で砂を手ですくったとして、その砂の集合体はどのように見えるでしょうか。
当然すくった砂は1粒1粒が独立した物体なわけですが、我々はそれを個別に認識するのではなく、「ひとすくいの砂」という形で、1つの塊のように見ているはずです。
同様の理由で、例えば毛筆の先や人の髪型なども、塊のように捉えて認識されると思います。
フォトグラメトリにおいても同様に、上記にあげたような微細なものなどは、1つ1つの形状は取り込めず、文字通り塊として形状が出力されます。
結果として生成された3DCGと被写体とでは全く違う性質のものになってしまいますので、被写体をそのままCG化できているとは言えません。
これが3Dプリンターで出力されるフィギュアなど、どちらにせよ細かい性質は再現不可能な用途で使われるものであれば問題はないですが、例えばゲームやCG映像などに使うのであれば、とてつもない違和感を発するものとなります。
こういった用途であれば、最初からCGを使うのがよいでしょう。
ケース3:特徴を捉えにくいもの
フォトグラメトリを生成する際に重要な概念として「特徴点」というものがあります。
特徴点とは読んで字の如く、物体の特徴を認識するうえで重要となる点(部位)のことです。
フォトグラメトリでは、被写体を360度全ての角度から撮影し、その写真をもとに3DCGが生成されていくことになります。
それらの撮影された写真はアプリケーション上で合成されていくわけですが、その際に重要になるのが特徴点です。
特徴点が全体にまんべんなく存在する被写体であれば、例えば横方向に回転させて撮影を行った場合、それらの特徴点が1枚毎に横へずれていきますので、アプリケーションは各写真の撮影アングルの位置関係を割り出すことができます。
それを全アングル行うことで、フォトグラメトリは物体としての3DCGを生成するに至るわけです。
しかし例えば特徴点がまったくない単色の球体の場合ですと、いくら被写体を回転させても、すべての写真が同一のアングルのように見えてしまいます。こうなると、アプリケーションは撮影されたアングルを割り出すことができず、結果としてフォトグラメトリとして生成できないという問題が生じます。
そのため対策を行うのであれば、特徴点を用意するしかありません。
しかし被写体に特徴点を別途つけるとなると、当然ながら元々の形状や色、模様を変えるということになりますので、生成される3DCGも元の被写体とは別のものになります。
そのため元の被写体に近づけるためには、Blenderなどの3DCG用のソフトで編集を掛ける必要が発生しますので、フォトグラメトリで3DCG化を完結するのは難しいということになります。
ケース4:被写体内に死角があり捉えにくいもの
最後は、単純に撮影が難しいものです。
例えば細部までディティールが施されている造形物などは、形状が複雑なために、どの角度からの撮影でもうまく写らない死角が発生してしまう場合があります。
当然写真で写っていない箇所はフォトグラメトリで生成することができませんので、対策としては細部まで撮影できる特殊なカメラを用意するか、写らない部分は諦めて3DCG用のソフトで編集するか、といった方法が考えられます。
終わりに
以上が、フォトグラメトリで生成の難しい物の特徴と、その対策でした。
フォトグラメトリがうまくいかない場合は、当コラムを参考にして原因を分析してみてください。
実際のフォトグラメトリ生成では、上記で挙げた原因が複合的にクオリティを下げていることも多く、慣れていないと対策をしてもうまくいかないこともあります。
また、対策が万全でも、撮影機材や技術の問題でクオリティが低下してしまうケースもあります。
そういった際には、弊社のような専門業者にご相談いただくと解決できる場合もございます。
弊社では無料トライアルでフォトグラメトリを実施し、満足いただけるクオリティであればご料金をお支払いいただいてデータを納品する形でサービスをご提供しております。お気軽にご相談ください。
