
毎年10月に宮崎県で開催されるプロ野球の若手選手育成を目的としたフェニックスリーグ(秋季教育リーグ)の「ひなたサンマリンスタジアム宮崎」で行われる試合を、中継することとなりました。
本コラムでは、事前準備から本番まで、野球中継の裏側についてご紹介します。
1.概要
今回の中継は4台のカメラと1台のスロー機材による構成です。中継車運用ではなく、バラシ中継での運用となりました。バラシ中継とは、各所から必要な機材を集めて体制を組み上げる中継方式であり、中継車の機材を一部流用しています。
2.準備
既存の機材と中継車から取り出した機材を組み合わせ、12Uラック二つに詰め込んでいきます。機材の組み込み後はケーブルを接続し、動作チェックを実施。確認後は再びケーブルを抜き、各機材をケースに収納してカゴ台車に載せ、機材車(3tトラック)に積み込みます。
3.移動
宮崎へ向かうルートは昨年までのルートがイベント運航の為、時間的に厳しかったので東京から大阪まで自走(8H)し、大阪から別府(12H)はフェリー、別府-宮崎までを自走(4H)と24Hの旅となりました。
途中で大分高速道路の臼杵が台風の影響で通行止めとなり、迂回することになりました。
4.設営
サンマリン球場の記者室を中継室とし機材を設置。テーブルの幅が狭いので60cmくらいの板を載せ、スイッチャーのコンパネやスローコントローラー、キーボード、RCP(カメラ調整)のコントローラーなどを設置しました。
カメラマンらはカメラケーブル(多治見の光ケーブル)を各ポジションへ敷設し、カメラヘッドにレンズを装着し組み上げていく。
音声さんは放送席の準備、球場ノイズマイクの設置及びケーブルの引き回し、インカム等の準備を担当。
機材構成はすごくざっくり、こんな感じです↓↓↓
上記以外にもルーティングスイッチャーやCG装置(テロップ)、波形モニター(映像信号確認)なども繋ぎこみます。
組み上げるのに大体3Hくらいかかり、そこから不都合があれば随時調整していく感じです。
5.4台カメラの配置
- 1カメ(PC間):バックスクリーン横に設置。ピッチャー(P)~キャッチャー(C)の間を撮影する主要カメラです。ピッチャーの投球からバッターの打撃までを捉えます。
- 2カメ(球追い):1塁側内野席の上段に設置。フィールドの全体像を把握しつつ、試合の進行状況を映し出します。
- 3カメ:1塁ベンチの横に設置。右バッターの時はバッター、左バッターの時はピッチャーを担当します。
- 4カメ:3塁ベンチの横に設置。右バッターの時はピッチャー、左バッターの時はバッターを担当します。




カメラマン撮影の様子(カメラ位置は順不同)
中継内容(ディレクション意図や実況・解説者の発言)に合わせて、3カメ、4カメは撮影対象を柔軟に変更する必要があります。
例えば、右投げのピッチャーvs左バッターの場合でピッチャーをメインに中継している際、4カメは基本的に左バッターを狙いますが、中継内容・意図に応じてピッチャーの表情(業界では面(メン)と呼ばれる)を撮影することもあります。
あるいは、対象の選手に関わりのある選手を狙う時もあり、同じ高校出身、ライバル選手などを狙いカットバックして中継を盛り上げたりもします。カメラマンには即応性と柔軟性が求められます。
6.新人カメラマン 中継デビューの感想
- 初めてやったので当然緊張はあった
- その中でも最低限出来たのではないかと思う
- 昨年度の各カメラの映像を見たりしてイメージは出来ていたのでスムーズに進められた
- 長時間やるのが初めてだったので後半は集中力が欠けそうになってしまった
- 知っている選手が多いときはすぐ見つけられるので、そこは武器になると思う
- 現時点ではマニュアル通りにやっているだけなのでレパートリーを増やせればなおよい
- あとはたくさん経験して失敗もしながら技術を磨いていきたい

カメラマンデビューにドキドキ...!
7.まとめ
フェニックスリーグ「ひなたサンマリンスタジアム宮崎」での中継は、今回で4回目。今年は天候に悩まされ、雨天中止が6試合。試合は開始したものの雨天ノーゲーム(2回までと4回まで)が2試合。これまではあっても雨天中止は1、2試合だったが、こんなに雨の降る宮崎は初めてでした。
前半はクライマックスシリーズへの調整もありソフトバンクホークスの柳田選手、山川選手、巨人の菅野選手、戸郷選手などスタークラスが続々と出場。関東圏では見られないファーム、ウエスタンリーグのチームに心が躍りました。
しっかりと野球中継の魅力を伝えつつ、若手スタッフの技術も向上できれば最高の舞台だと思います。来年もあるといいな、フェニックスリーグ中継。。。
