
新たな配信スタイルとして注目されている「マルチアングル配信」。
今回は、マルチアングル配信に向いているコンテンツとはどういったものかを、実例を用いて紹介いたします。
- 関連サービス
- マルチアングル配信サービス「yourLIVE」
マルチアングル配信とは
マルチアングル配信とは、視聴者が見たい画面やアングルを同一プレイヤー内で自由に選べる、新しいスタイルの配信サービスです。
例えばテレビの中継であれば、今までは1つの映像内でプロがスイッチングを行い、それにより視聴者は1画面ではあるものの、様々なカメラからの映像を見ることができていました。
しかしマルチアングル配信では、自分自身で映像を切り替えることができるので、中継のために用意されているすべてのカメラの映像から、自分が見たいものを取捨選択できるようになります。
マルチアングルのよくある疑問
デジコンでは、株式会社JVCケンウッド社が提供をしている「yourLIVE」を用いたマルチアングル配信を提供しております。
※デジコンは「yourLIVE」の販売パートナーとして事業提携をしております。
その関係で、JVCケンウッド社が出展をした展示会にパートナー販売員として参加もさせていただいているのですが、そこでも多くの人からご興味をいただけました。当然そこでも多くの人からできることをお伺いいただいたのですが、一番ご興味をいただけたのが「どういったコンテンツがマルチアングルに向いているのか」という点でした。
マルチアングルが持つ魅力の本質
やはりマルチアングルは「新しい視聴体験」という点をパッと見でも感じていただけることが多いです。
一方で、今ある映像コンテンツがすべてマルチアングルに置き換わるかというと、それはNOだと我々は考えております。
その裏付けとして、実はマルチアングルに関しては数年前から技術としては確立されているのですが、いまだに市民権を得ているとは言いづらい普及率に留まってしまっています。
実際にサービス提供している我々としても、マルチアングルは全てのライブ配信形式を塗り替えるようなものではないと考えております。
やはり配信形式には向き不向きがあり、マルチアングルもそれは同様です。
今回は、マルチアングルに向いているコンテンツとはどういったものかというのをご紹介しようと思います。
マルチアングルに向いているコンテンツ
マルチアングルというサービスが持つ表面的な印象は「見れる画面数が多い」だと思いますが、重要なのはここではありません。
マルチアングルが持つ本質的な価値は「シームレスに好きな映像を選べる」だと私たちは考えています。
多くの人は、例え多くの映像が画面に映っていたとしても、見るのはその中の1画面だと思います。 そう考えると、ただ複数の映像が見えるというだけだと、プレイヤーのサイズが据え置きであれば映像が小さくなって見づらくなるだけになってしまい、むしろユーザー満足度を下げることになってしまいます。
ですのマルチアングルを使う際には「シームレスに好きな映像を選べる」という点を活かせるかどうか、という視点で考えるのが重要となります。
マルチアングルの特徴と活用例
シームレスに好きな映像を選べるというメリットを享受できるのは、主に下記の5パターンです。
- 様々な画面で見ることで、今までなかった面白さがある
- 同じコンテンツ内でも人によって見たい画面が違う
- 並行して複数のアクションが行われている
- 複数のアングルを見ることにより新たな学びがある
- 実験的なアングルや映像を無理なく追加できる
特徴と活用例
細かくそれぞれのご説明いたします。
5-1.様々な画面で見ることで、今までなかった面白さがある
テレビ中継の場合は前述のように、様々なカメラ映像からその場面ごとでプロが適切な映像を選び、選ばれた映像が配信されます。
当然その映像は様々な人に楽しんでもらえるように、色々な映像をバランスよく切り替えて配信されます。大雑把な言い方をすれば、まんべんなくいろいろな画面を映して全体を見せるイメージです。
具体的な例え話として、花火大会の中継で考えてみましょう。
花火大会の中継映像などを思い返すと、定点で同じ映像をずっと流しているわけではなく、様々な地点からの花火が映し出されています。
なぜ単一の地点からの映像だけではなく複数の場所から撮影されているかというと、当然様々なところから撮ったほうが多角的に花火を捉えられて面白いからです。なので中継映像では、さまざまな拠点から撮影した映像をうまく混ぜ合わせながら1本の映像が作り上げられています。


JCOM株式会社様にて実施された、関門海峡花火大会でのマルチアングル配信の様子
ではここでマルチアングルを活用するとどうでしょう。
マルチアングルで花火をとらえられれば、様々な場所からの花火をいっぺんに見ることができますので、いろいろな地点から見るおもしろさを、いっぺんに味わうことができます。
また、気に入ったアングルがあればそこをずっと見ることも可能です。海岸線沿いから、山の上から、船の上から、空中を飛行するドローンから…といった様々な映像を同時に視聴できるのは、まさしくマルチアングルの醍醐味です。
5-2.同じコンテンツ内でも人によって見たい画面が違う
これはわかりやすく、アイドルのライブなどを想像していただきたければと思います。
4人組のアイドルグループの映像配信であれば、基本は4人が映る映像で、ソロパートではそれぞれのメンバーにカメラが寄る、というのがよくあるパターンだと思います。
しかし視聴者について細かく考えていくと、例えば推しのメンバーが決まっているという方であれば、推しメンをずっと見ていたいというのがよくある意見でしょう。 当然マルチアングルであれば、全体の映像も楽しみつつ、推しの姿を余すところなく見ることができますので、満足度は向上すると考えられます。
他にも、例えばオーケストラの演奏などであれば無数に楽器がありますので、その分アングルを作ることもできます。

マルチアングル配信を行うことにより、オーケストラでも自分の注目したいパートのみを鑑賞可能
オーケストラを鑑賞する方の何割かは、自分も楽器を演奏するという方だと思いますので、そういった方はマルチアングルを使うことで、自分がやっている楽器にフォーカスして配信を楽しむことができます。これもマルチアングルの魅力の一つです。
5-3.並行して複数の事が行われている
これはスポーツの大会などが分かりやすい例となります。
大会では多くの場合は予選から行うこととなりますが、予選では複数の試合が同時刻に並行して行われることがほとんどだと思います。
これらの予選をすべて配信するとなると、試合数分の視聴プレイヤーを用意しなければいけないことになりますので、競技によってはとても煩雑な準備が必要となります。
一方でマルチアングルプレイヤーであれば同時に複数の配信を1つのプレイヤーで行えますので、こういった予選の様子を流すにはぴったりの選択肢です。
また、例えば広い範囲で色々な催しごとが実施されるお祭りなども、マルチアングル配信に向いているコンテンツとなります。

複数試合が同時並行で行われるスポーツ大会の予選にも使いやすいシステム

マルチアングルプレイヤーを用いることにより、広い範囲で実施されているお祭りも1プレイヤーで視聴可能に
5-4.複数のアングルを見ることにより新たな学びがある
こちらは主にレクチャー動画やeラーニング教材としての使い方です。
例えばなにかのスポーツで正しいフォームを紹介するとき、ヨガなどのフィットネスで正しい姿勢を紹介するときなどは、1つのポーズを様々な姿勢から見ることが多いと思います。
そんな時にマルチアングルであれば、見たい視点をシームレスに選択できますので、より簡単に視聴者は学びを得ることができます。

レッスンのクオリティ向上にも
また、チームスポーツなどでも「このシーンではどのようにチームメンバーが動いているのか」というような俯瞰視点での検証、分析をする際などに、マルチアングルであればスムーズに確認できます。
最近流行りのeスポーツでも同様で、一人のプレイヤーがスキルを使ったことにより連鎖的に戦況が変わっていったシチュエーションなどがあれば、その様子を各視点で追いかけることが可能です。
5-5.実験的なアングルや映像を無理なく追加できる
最後は少し特殊ではありますが、マルチアングル配信を実験台にするという使い方です。
といっても配信をまるまる全部実験台にするのではなく、マルチアングル配信の一部の画面を実験台に、という発想です。
前述の花火大会のマルチアングル配信を例にして考えてみましょう。
花火大会のメインは花火ですので、ライブ中の殆どの映像は花火の様子となります。 当然ライブの視聴者も花火を楽しみに見ているわけですから、これを外すわけには行きません。ですがマルチアングル配信であれば、任意の数だけ画面数を増やすことができます。
画面数に制限がないのであれば、例えば花火を打ち上げる職人さんの作業風景や、花火が上空に射出される様子など、今までは「メインではないから」と映し出されていなかったニッチな映像についても、マルチアングルで視聴者に届けられるようになります。 むしろ、今までは伝えきれなかった花火の技術的な部分や文化などは、変にメイン映像に無理やり紹介を入れるよりしっかりと触れられるでしょう。
最終的にこの中で評判がいい映像があれば、来年はテレビ中継でもその映像を積極的に使ってみよう、となるでしょうし、そうでなかったとしても無理なくチャレンジに取り組めるわけですからメリットのほうが多いはずです。

日本体操協会でのマルチアングルでは、CM枠のほか、選手がウォームアップを行うサブアリーナやミックスゾーンなど、通常配信では取り上げにくいエリアもマルチアングルで配信された
なお、この使い方の別パターンとして、マルチアングルの中の1画面はずっとCMを流してしまう、なんていう使い方もできます。
イベント中常に流れる映像があるというのは、例えばスポンサー獲得に対してポジティブな要素だと思いますので、こういったご利用方法も有効なマルチアングルの使い方です。
マルチアングルは発展途上なジャンル
このような形で、マルチアングルは効果的な場面をきちんと選ぶことで初めて、今までのライブ配信よりも満足度の高いコンテンツに仕上げることができます。 一方で、マルチアングル自体もまだまだ発展途上のジャンルですので、きっと今後も新たな活用法などが発見されていくはずです。
私たちデジコンでは、マルチアングルのコンテンツとしての可能性をお客様と追い求めていきたいと思います。
